幹細胞治療とは

当院が実施している幹細胞治療は、幹細胞を経静脈的に体内へと注入することによって、幹細胞が体の中の様々な理由でダメージを受けた部位(ニッチ)で、成長因子やサイトカインと呼ばれるタンパク質を分泌し、もしくは必要ならば、そのニッチにホーミングし、ダメージを受けた組織を持続的に修飾させることで病態の改善を目指す治療法です。 まず、患者様の脂肪(主に下腹部臍下部から)を5g程を採取し、更には当クリニック内の高度に滅菌された培養室(CPC)にて脂肪から取り出した脂肪由来の幹細胞を、約3週間で1回の培養毎に必要な細胞数(5000万個から2億個)まで増殖させます。そして、静脈注射(点滴)により投与します。

脂肪組織は当院にて採取し、当院内の培養設備で培養により幹細胞を必要な細胞になるまで増やし、静脈点滴により投与を行います。

幹細胞の能力①ホーミングとは

体内へ投与された幹細胞がニッチ(体内の障害部位)に到達し、ニッチからのサイトカインや接着因子などの誘導シグナルと,幹細胞側の誘導シグナル感受機構が作動することの双方がホーミングに必要とされる.例えば骨髄では、低酸素環境(誘導シグナル)を造血幹細胞が感知することがホーミングの為の必要条件である.ホーミングが成立してはじめて幹細胞はニッチにおいて分化細胞産生が可能になる.

 

幹細胞の能力②治療対象となる疾患

(間葉系)幹細胞を使った再生医療領域では、脳内出血、脳梗塞等の脳卒中、或いは脊髄損傷による中枢神経機能障害, 変形性膝関節症、更年期障害、そして肝機能障害、糖尿病など生活習慣病の治療に向けて幹細胞治療が行われています。さらに、幹細胞は体の免疫系を調節、抑制する性質があり、それにより自己免疫力を安定させる作用があります。また、幹細胞は血管内皮細胞の分化誘導を行い、血管を新たに作り、血行を改善する血管新生作用もあり、動脈硬化症の予防、全身的な血行改善による体内活性化、若返り効果が期待されます。他にも、抗炎症作用や、抗酸化作用、細胞死の一種であるアポトーシスを予防する抗アトポーシス作用も確認されています。

 

再生医療

幹細胞治療は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」によって、厚生労働省が認めた特定認定再生医療等委員会でその治療の安全性や科学的妥当性等が厳しく審査され、厚生労働省に再生医療等提供計画を提出する義務が定められています。
当院におきましては、以下5種類の病態についての提供計画書を提出し、既に厚生労働省厚生局に受理されています。

再生医療等の名称 提供計画番号 受理日
自己脂肪由来幹細胞を用いた肝機能障害治療 PB5210015 2021年6月4日
自己脂肪由来幹細胞を用いた顔面萎縮症・皮膚再生治療 PB5210014 2021年6月4日
自己脂肪由来幹細胞を用いた中枢神経機能障害の治療 PB5220010 2022年5月11日
自己脂肪由来幹細胞を用いた慢性疼痛の治療 PB5220011 2022年5月11日
自己脂肪由来幹細胞を用いた自己免疫疾患の治療 PB5220012 2022年5月17日

期待される効果と副作用等について

本治療を受けることによるリスクとしては、脂肪の採取、そして細胞の投与に伴い、合併症や副作用が発生する場合があります。本来的に、幹細胞は全身投与にて損傷した部分の修復のために数種類のサイトカイン、免疫抑制因子、そしてエクソソームと呼ばれる細胞間伝達物質などを分泌する機能を有しているため、投与後、一時的に炎症のある部位に痛み等が現れることがあります。また、極めて稀なケースながら、幹細胞の極度に高速の静脈点滴を受けたと考えられる患者様が肺塞栓症(肺の血管が詰まる症状)を引き起こした事例も報告されています。

幹細胞治療を投与した後の効果はゆっくり現れる場合も多いが、付き添った家族が驚くほど投与直後から表情や歩き方などに効果が見られる場合もあるので、幹細胞投与後の間もない時から月毎に、治療効果が安全かつ有効に得られているかを短長期的の双方で評価・フォローを行う必要があります。